レアンドロ・エルリッヒ「Lost Winter」をみてきた。

今回の越後妻有への旅で、「再構築」とともに気になっていたレアンドロ・エルリッヒの新作を観に行くことができた。三省ハウスという廃校をリノベーションしたドミトリーの宿泊施設があるのだが、そこの共有スペースに作られた「Lost Winter」という常設の作品となる。レアンドロ・エルリッヒらしい、さっかくやギミックがあふれた作品になっている。

三省ハウスは越後妻有の松之山地区にあって、松代の農舞台から車で15-20分くらいのところにある。近くには松之山名物の「志んこ餅」というコシヒカリから作った和菓子をつくっている小島屋製菓店があるので、忘れずに買っておきたい。三省ハウス自体はドミトリーがメインの宿泊施設になっているので、僕はあまり興味がないのだが、このエリアを安く旅するには便利そうなところだと思う。

三省ハウスの周囲は山深い山村という感じ。

レアンドロ・エルリッヒはアルゼンチン生まれの現代美術のアーティストで、金沢にある21世紀美術館の「スイミング・プール」という作品が有名。越後妻有だと十日町のキナーレに「トンネル」という、これもまた目の錯覚のような不思議な遠近法の作品があってこれもおもしろい。レアンドロ・エルリッヒは「思い込みの積み重ねこそが現実だ」という言葉を残しているようだけど、たしかに自分のみている世界はじつはちょっとゆがんでいて、こうに違いないっていう思い込みが、作品を通してさらっとあしらわれていて、それがちょっと楽しい。

Lost Winter
真夏にみる電子暖炉がシュール
窓の外には雪景色

「Lost Winter」は真夏にみる冬の幻影みたいなところがあって、窓の外は真夏の日差しで緑がしげっている。そして室内も日陰とはいえ結構あついのだけど、部屋には電子暖炉がついていて部屋の中にあるもう一つの窓からは雪景色がみえる。暖炉は別に暑くもなく、普通なのだけど真夏なのにあたたかい光があったり、ラウンジは落ち着いた雰囲気があって夏なのに冬っぽい。

そして、窓をのぞき込むと、向かい側ではなく、なんか窓の向こうの変な方向から僕がこちらをのぞき込んでいる。なので、身体を動かして場所を確認しようとするとまたずれていくという変な感覚がある。たまに木が風にそよぐかのように動いたりもして、ほんとうに真冬の夜に小さな中庭の風景を眺めているかのようだ。この錯覚した感覚がレアンドロ・エルリッヒの作品の面白さだなって思う。この作品はほかのものと比べるとまったく写真映えしないのだが(真夏なのに真冬というのは絵で表現しづらい)、これこそ体験してこそのアートなのだろうな。

この松之山も8月から半年も経てば雪に閉ざされたエリアになるのだが、そんなことを考えながら暖炉の光を不思議な感じで眺めたりするのもまた楽しい時間だと思う。真夏なんだけど。

三省ハウス
新潟県十日町市松之山小谷327


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