最後にみた「再構築」の風景、越後妻有「大地の芸術祭」

今回の旅でもっともみたかったものを観に行く。使われなくなった小屋をリノベーションしたこの作品は2006年にうまれて、それから冬の間は雪囲いで保護されて、夏はまわりの風景をうつしだしてきて、越後妻有の作品群のなかでも最も有名なもののひとつになっている。

思っているよりだいぶ小さな小屋は遠くからみるとまわりの風景を反射してそこに溶け込んでいるみたいにみえる。ときおり吹く風で草原の緑がそよぐ動きが映り込み、それはなんだか現実世界がちょっとゆがんでいるかのような感じがする。

この作品をつくった行武治美さんはガラスや鏡をつかったインスタレーションを作り出すアーティストであり、普段つかっているものが形をかえてみえることで世界まで変わってしまうかのようだ。小屋の老朽化が進んでしまい、2017年の夏で最後の公開となることが決定。撤去されてしまう前に、もう一度じっくりと作品に向き合ってみたいなあと思ってここまでやってきた。

雑誌の表紙とかでも何度か見かけたこの建物は、赤い屋根もかわいくて絵本のなかの風景みたいだ。小屋は外側だけでなく、内側にも楕円形の鏡がびっしりと貼り付けてある。建物の内側についている鏡はちょっと揺れる取り付け方になっていて、人が歩いた拍子や風が通り抜けると、ゆらゆらと鏡が不規則にゆれて、風や光の動きがみえるかのようだ。

外側の鏡はなんかいままで一番くっきりときれいに磨かれていたと思うのだが、外の風景をうつしこんでいて、遠目にながめると草原のなかに溶け込んでいるかのようだ。近くにくると空の光がはいってきたり、やはり風の動きで草が動くと小屋の鏡にも動きがあって現実世界がすこし浮遊しているかのようにみえる。この揺らいだ感覚がとても好きな作品なのだが、この夏で見納めになるとは。とても残念だけど、夢のように美しい作品だったと思う。

 

 


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください