セララバアドでモダンガストロノミーの最高峰を体験

去年訪れたマンダリンオリエンタルのタパス モラキュラー バー。そこで料理長をつとめたシェフがオープンしたレストランが代々木上原にできたと知って予約をいれたらすでに数ヶ月先という状況。

とはいえ、気がつくとその日はやってきて訪れることができた。すごい楽しみでランチは控えめにしてしまったくらい。代々木上原の裏通りというロケーションもいいよなあ。このあたりの街は落ち着いていて、すごく好き。

シェフである橋本氏はスペインのEl Bulli (エルブリ) Martin Berasategui などで修行して、帰国後はRESTAURANT SANT PAUで腕を振るい、前職はマンダリンオリエンタルのタパス モラキュラー バーの料理長。このレストランのオープンする前にはデンマークのnomaで少し修行していたとのこと。エルブリといい、ノーマといい世界トップクラスの経験をもっている日本人がいること自体、ものすごい貴重なことだと思う。

メニュー、ラベンダーが素敵
メニュー、ラベンダーが素敵

セララバアドではどんな料理が出てくるのだろう、モラキュラーバーみたい派手なのが出てくるのかと思ったら、質実剛健な目先の華やかさだけじゃない美しく洗練された料理が出てきて、なんだか安心というかほっとしたというか。

そして、日本の食材を探してまわったのだろうなと思えるほどに、日本の食材を使っていてワインリストも広島のワイナリーとか日本のワインがあったりと、世界を体験したからこその日本を表現していることになんだかすごく共感といったらおこがましいかもしれないが、感動した。

色んな国を旅して、色んなところで料理を食べたり、体験したりしてきたが、どうしても日本という場所が好きなんだよなあっていう感覚が僕にもある。いいものを作っていれば売れるっていう時代じゃないからこそ、いいものを作っている人たちと楽しくやりたいっていうのもある。そういうところに分子料理的な奇抜さだけじゃない、洗練されたモダンガストロノミーで表現するのって素敵なことだな。

とはいえ、カウンター2席、テーブル12席、テラス2席という小さなレストランだけに予約は困難。本当に行けたのは奇跡じゃないかって思うくらいだ。

6月に訪れたのだが、メニューは春の料理。料理はみんな一斉に始めるコースなので19時までの到着は必須。でも、そこからの3時間はあっという間。カメラで料理を撮りたくなるようなものばかり。本当に楽しい時間だった。

まずはスパークリングを飲んで、ちょっと料理のはじめに生ハムが少し余っているんで、別料金だけどどうですか?っていわれて断る理由もないので頼んでみる。別口でオリーブオイルがついてくるのだけど、丸くイクラみたいにコーティングされていて、これがまた食感含めて面白い。

北海道 十勝産 泥豚の生ハムとオリーブオイルの塊
北海道 十勝産 泥豚の生ハムとオリーブオイルの塊

そして、いよいよコースのスタート。橋本氏自らも料理を持ってきてくれて説明してくれる。これはなんというか・・贅沢すぎるコースだ。

おもちゃ箱みたいな缶の中をぱっと開けてなかには「ホタルイカと昆布のタルト」。どれもよく知っている食材なのに、なんなんだこれは。美味しすぎるだろう。

ホタルイカと昆布のタルト
ホタルイカと昆布のタルト

そこからは続けざまにストーンポテトが登場。背景に添えられているタイムもかわいい。食べられる石はひとつだけなのだが、あえて色を変えてくれないとちょっと危ういくらい石っぽい。表面も本当に石みたいでなかを割るとほくほくのお芋がでてくる。

ストーンポテト
ストーンポテト
石のなかから、ほくほくのお芋
石のなかから、ほくほくのお芋

そして春の高原。信州の農家から花がおくられてきたということで、本当に草原なかで寝転びたくなるような気持ちのよい景色が想像できて、テンションがあがる。よくみたら蝶々まで飛んでいるし!

花のサラダ
花のサラダ
春の高原
春の高原
蝶々が飛んでいる!
蝶々が飛んでいる!

続いては春の大地っていう料理。切り株のお皿に出てくる時点でもうこの美しさにやられているのだが、食べても美味しい。日本のワインを頼んでいるのだが、さっぱりとしたワインにあう料理。日本の食材をこうやって美味しく食べるということを究極まで考え抜いて昇華して表現していることがすごい。想像の外にあるものな、こんな料理。

春の大地
春の大地

料理を楽しんでいたら、キッチンの方から煙がでてきた。なんだか、みんな慌ただしくしていて、何が起きるのだろうと思ったら、ここは演出的な楽しみ。温泉卵を燻製にしたスープがでてきた。クルトンでできたスプーンもついてきてモラキュラーガストロノミーっぽい演出。これは楽しい。

スモークエッグ。なかが燻製の煙で満ちている。
スモークエッグ。なかが燻製の煙で満ちている。
開封!なんか楽しい・・。燻製のいい香りがお店中に広がっている。
開封!なんか楽しい・・。燻製のいい香りがお店中に広がっている。
クルトンのスプーン
クルトンのスプーン

まだまだメインにまで遠くて、どこまで行くんだろう?どこまで行けるんだろう?っていうような展開。続いて出てきたのはリゾット。青のりの出汁が抜群にきいていて、和食のようでもあるし、エスニック料理的でもある。海ぶどうまでのっているし。これがモダン ガストロノミーか!と思う次第。

リゾット
リゾット
自家製のパン
自家製のパン

そしてグラニテっぽい感じで焼酎のゼリーみたいなものが登場。ここもあえて焼酎というところに日本料理の流れでいくセンスが素敵。楽しすぎる。

セララバアド

さて、いよいよメインが近づいてきた。楽しみやら寂しいやらって感じだけど、時間は過ぎていくし全てのものには終わりがある。続いて出てきたのは海老のビスク。シンプルな料理なのだけど、すごく手間がかかっていることを感じるというか、なんだこのあっさりとこってりの両方をもったビスクは・・という感じ。

 

海老のビスク
海老のビスク
メインは短角牛の低温調理ロースト
メインは短角牛の低温調理ロースト

そして、メインは短角牛を低温調理したものが登場。お皿の盛りつけもちょっと面白い。食べるのがもったいないなあ・・と思いながらこちらも残り少なくなったワインを飲みながら考えて食べたりする。

生きていくために食べるのであれば、食材をそのまま食べればいいだけの話なんだが、人はそれに味をつけたり、切ったり叩いたり、混ぜ合わせたりと手間をかけている。それって生きるために食べるということに対しては意味がないようなことなんだろうけど、美味しいっていう感覚はなにものにも変えられない幸せな感情だし、これが生きていきたいってことにつながったりもする。

料理とか美味しいものっていうのは、たとえばブランドもののバッグみたいに形に残らないし、美味しいっていう感覚は目に見えないものだけど、目に見えないからこそ大事な価値観なんだろうなって思ったりする。

そして、ちょっと話はずれるけれど、旅というのも料理と同じようなもので、目に見えない価値観だったり、自分のもっている文化やものさしとの比較なんだろうなって思っている。僕はこのふたつは似ていると思っているからこそ、このブログにはどっちの出来事も載せているんだけれど。

そんなことを考えていたらあっという間にデザートの時間。もう終わってしまうのか。最初のデザートはごく普通にといったら変だが抜群に美味しい定番のもの。

セララバアドそして、ラストのデザートは食べるのが惜しいようなもの。一番左端はオリーブオイルのグミになっていて、食べてみるとなんていうか・・ううむ、こってりとあまさと、オリーブオイルのうまみと・・これデザートなんだけど、デザートじゃない!でも、やっぱりデザートだ・・という不思議な食べもの。

セララバアド

気がつくともう22時を過ぎていて、コースが始まってから3時間も経っている。楽しい時間はなんとあっという間なのだろう。橋本氏がここのレストランをひらいて表現したいものということに少し触れられたことがすごく楽しかったし、この時間を共有できたことがなんだか光栄なことなんだなあって思ったりした。ここの料理は機会があれば、色んな人に楽しんでみてほしい。

セララバアド
住所;東京都渋谷区上原2-8-11 TWIZA上原 1F
時間:18:30オープン、19:00スタート厳守
休み:不定休(予約必須)

 


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